登山の健康効果とは? ブログ:インプレ式

今回は登山が身体と心と脳に与えてくれる健康効果についてご紹介します。コロナウイルスの影響により、我が登山サークルは『登山と健康』ということに焦点を当てて来ました。今回はプチ講習会スタイルにてアプローチをしてみました。
【目次】

1.登山による身体への効果:運動効果編
1-1有酸素運動によるカロリー消費
1-2登山にて基礎代謝量を上げる
1-3登山の筋肉の役割
2.登山による身体への効果:健康効果編
2-1登山がもたらす病気への予防
2-2登山は免疫力がアップする
2-3登山はアンチエイジングの宝庫
2-4登山と美容について
3.登山による心理的な効果:癒し&達成感=開放感
3-1ストレスからの開放~癒しの世界へ
3-2登頂時の達成感
3-3転地効果
3-4自然の治癒力
4.登山は脳の活性化をしてくれる
4-1ドーパミンとアドレナリン:やる気のホルモン
4-2エンドルフィン:幸せのホルモン
4-3セロトニン:安心のホルモン
5.インプレ式:健康登山のまとめ
登山の健康効果とは? 山を歩くと健康になるのはなぜ?
週末に人里を離れて自然の中を歩くと心身共に爽快になります。今回は登山が健康面で与える恩恵について焦点を当ててみます。日帰りハイキングや登山をすることによる授かる健康効果を『インプレ式』にてご紹介します。

登山の健康効果とは? 山を歩くと健康になるのはなぜ?

週末に人里を離れて自然の中を歩くと心身共に爽快になります。今回は登山が健康面で与える恩恵について焦点を当ててみます。日帰りハイキングや登山をすることによる授かる健康効果を『インプレ式』にてご紹介します。


1. 登山による身体への効果:運動効果編

登山の運動による効果は①有酸素運動②基礎代謝③筋肉の三つであると考えます。

①有酸素運動②筋肉③基礎代謝

1-1 有酸素運動によるカロリー消費

山を歩くということは、身体に酸素を取り入れながら行動する『エキササイズ=運動』です。一般的に登山はエアロビクス(有酸素運動)と言われています。登山はほぼ朝から夕方までの長時間歩くので脂肪をエネルギーとして燃焼してくれますので心肺機能の向上や改善に役立ちます。脂肪が減少することにより肥満も解消され代謝も良くなります。生活習慣病である血中脂質や血糖値、血圧の状態の改善にも効果的です。また山を歩くことで身体に荷重がかかり、骨に刺激が加わると新しい骨をつくる骨芽細胞が活発化します。骨量がアップするので骨粗しょう症予防にも良いです。

登山は体重や距離や荷物や気象条件などのコンディションにより異なりますが、ひとつの目安として標高差が300Mごとに、おおよそ500カロリーの消費があります。例えば、高尾山口駅(224M)から高尾山(599M)までの標高差は355Mなので500カロリー以上の消費があることが分かります。そこに基礎代謝の男女平均約1300カロリー(男性が約1500で女性が約1100)が加算されるのでアプローチも含めるとおおよそですが男女平均で約1800カロリーの消費をすることになります。これがアルプス登山ですと標高差が1000~1500M位あります。単純に高尾山を3回から5回以上を登る運動効果があるのでダイエットにも効果的です。

<高尾山の例>
約500カロリー(運動代謝量)+約1300カロリー(基礎代謝量)=約1800カロリー

<富士山の例>
約2700カロリー(運動代謝量)+約1300カロリー(運動代謝量)=約4000カロリー

ダイエット効果があった山ボーイ

1-2 登山にて基礎代謝量を上げる

アルプスの登山や日帰りハイキングをすることにより、基礎代謝量は上がります。基礎代謝とは『生きてくうえでの最低限必要な生命活動を意味し、内蔵を動かしたり、体温調節をしたり、必要最低限の生命の維持に使われるエネルギー』と言われるものです。

厚生労働省における、身体の部位別の基礎代謝量は、 骨格筋22%(一般的に筋肉と呼ぶ) 脂肪組織4% 肝臓21% 脳20% 心臓9% 腎臓8% その他16%です。

基礎代謝量の部位別のグラフ:骨格筋22% 脂肪組織4% 肝臓21% 脳20% 心臓9% 腎臓8% その他16%

【参照:厚生労働省e-ヘルスネット|ヒトの臓器・組織における安静時代謝量
基礎代謝を上げる為に最も効率的なのは身体全体で22%を占めている筋肉を登山で使うことです。
一般的に身体の中で最も多い筋肉の部位は1位殿部(おしりの部位)2位大腿(足の付け根から膝までの部位)3位下腿(膝から足首までの部位)の下半身部位が全筋肉量の約60%を占めています。登山は下半身を中心に筋肉へかかる負荷が大きいので基礎代謝が上がりやすいです。また登山は長時間に及ぶ全身運動ですので筋肉を使うことにより、他の臓器も平行して機能の向上にも繋がります。

1-3 登山における筋肉の役割

登山中の筋肉は行動や山岳エリアでの滞在への環境適応に使われます。

<登山時の筋肉の役割とは?>

1)身体を動かすエンジン

登山中の筋肉は山に登る時や下山をする時に現れる運動行為、つまりエンジンとしての役割があります。上半身は手を振り子のように使い推進力を上げて歩きます。またザックを背負っている時に腰回りの筋肉を使います。下半身は登る時や着地をする時に使われます。登山中の筋肉はゆったりと収縮と弛緩とを長時間繰り越すことによって、移動をしたり停止をしたりすることが出来ます。

2)姿勢を保つ

登山には登りと下りがあり登山には必ず高度差があります。リュックサックを背負い安定した姿勢で歩けるのは、筋肉が長時間において緊張状態にあるからです。また筋肉を効率的に支える役割として関節も並行して使われます。

3)産熱をする

人の身体は体温(平均36.5度)を一定に保たれるようになってます。熱産生の約60%が筋肉で、20%が肝臓や腎臓、20%が褐色脂肪(産熱の燃料となる脂肪)とされています。高地エリアでは気温が低下するので、環境への適応のために産熱量は上がります。
【参照:山の気温はどうして下がるの?山が寒い理由とは?】

2.登山による身体への効果:健康効果編

2-1 登山がもたらす病気への予防

登山は全身運動です。筋肉だけでなく内臓の動きも活発になり、血糖値やコレステロール値が下がります。糖尿病や高脂血症などの生活習慣病(成人病)などからも予防をすることができます。また、心臓に適度な負担をかけることで血管の伸縮性も良くなり、動脈硬化などの血管の疾患にも予防できます。血液の循環が良くなることにより『身体の善』の部分が身体全体へと行き渡るので活性化されます。目安としては月一回程度、山歩きをいている方の健康状態は良好へと向かいます。

富士山を登る山ボーイ君のイラスト頑張って登る山ボーイ君

2-2 登山は免疫力がアップする

山登りは宿泊を伴うアルプス登山から日帰りハイキングとあらゆるジャンルのスタイルがありますが、基本的に登山は他のスポーツと異なり、低荷重・低移動により身体に負荷が掛りにくいのが特徴的です。身体の免疫作用を作るのは主に腸内です。登山中には腸内へ沢山の血流を送り込むことが出来ます。腸内で作られた沢山の善玉菌により免疫性は高まります。登山は朝から夕方まで沢山の血流を送ることが出来るので免疫作用は向上します。

また登山により沢山の血流が全身へと回るとナチュラルキラー細胞が体内で活性化されます。NKキラー細胞とは体内で発生をしたウイルス感染細胞やがん細胞などを見付けて攻撃をするリンパ球です。私たちが生まれながらに持っている防御機構で自然免疫の向上にとても重要な役割を果たしています。

2-3 登山はアンチエイジングの宝庫

人は生まれた時から老化作用が始まると言われております。加齢とともに骨密度や筋肉量は減少していきます。登山はアンチエイジング対策として効果があります。過度な運動は活性酸素が多く生じるので老化の原因となってしまいますが、長時間運動で低荷重・低移動の登山は身体にとても易しいのが特徴です。

登山中は筋肉を動かす為に必要な酸素を運ぶと毛細血管が増えていきます。血流がよくなりお肌への栄養素の補給が活発化し、老廃物の循環もスムーズにしてくれます。新陳代謝が上がることによって肌の調子がよくなり、見た目も若々しくなります。

2-4 登山と美容について

登山は美容には効果的なスポーツです。

登山と美容~健康的な山ガールのイラスト

登山は体内に溜まった老廃物を排出し易くなります。肌細胞に必要な栄養や酸素が肌全体に行き渡り、新陳代謝が良くなり古い角質がとれ、キレイな肌を取り戻しやすくなります。

<登山による美容効果とは?>

・汗は天然の美容液

汗は天然の美容液と言われております。古い角質の毛穴の汚れを外に出したり、皮膚代謝をするだけでなく、汗の中に含まれている乳酸ナトリウムや尿素がお肌の保湿性を高めて乾燥肌から守ってくれます。

・食欲がわく

登山は消費カロリーが高いので、お腹が空きやすくなります。下山後には五大栄養素である、糖質・脂質・たんぱく質とそれにビタミン・ミネラルをバランス良く摂取すると美容にも効果的です。

・質の高い睡眠
登山は運動による消費エネルギーが高いので、心地良い疲れにより質の高い睡眠が期待出来ます。仕事などの疲労とは異なり積極的な運動や自然の中で過ごすことにより質の深い睡眠が期待出来ます。そのために肌にも、脳にも効果的です。

登山により心地良い疲れによりで眠る山ガール

3. 心:登山&ハイキングによる心理的な効果~癒し&達成感=開放感

人の身体は心と密接な関係があります。心がくじけてしまうと体調も崩し免疫作用も低下します。登山は健康的な身体を作るだけでなく、心にも良い影響を与えてくれます。自然が私たちハイカーに与えてくれる心理的な効果は・・・

3-1 ストレスからの開放~癒しの世界へ

日々、ストレスとの関連性の高い現代社会では、外に出て自然と触れ合うことにより様々な恩恵を授かります。近年の研究では森林浴をするとストレス性ホルモンの代表である『コルチゾール』の濃度が低下することが判明されました。コルチゾールとは、副腎皮質から分泌されるホルモンの一つです。

週末に森の中に一度足を踏み入れると、空気がとても美味しく感じます。自然というステージは私たちの身体だけでなく、心も包み込んで浄化をする作用があります。自然の中では木々や大地や草や花や水や空などの息づかいを感じます。自然界の刻々と流れる『瞬間』に私たちハイカーは癒されるのです。

また、このストレスホルモンのコルチゾールは単独で山を登るよりも仲間などと一緒に登ることにより一層低下をします。自然への理解と仲間との共感によりストレス指数は低下をします。

3-2 登頂時の達成感

登山やハイキングを始めてやる方であれば、装備や服装や山のレベルや目的の山の魅力などを調べるなどを様々な準備をします。🔰初心者の方であれば、息切れや筋肉痛などを感じる方も多いかもしれません。(最低月一回、山に登ればそれらは改善されます。)それでも山頂に到着をした時には、清々しい気持ちにさせてくれます。周りに広がる峰々や高い空は自由に雲を描き、また足下を見るとお花が咲いていたります。自分で頑張って到着をしたこととそれを受け入れてくれる自然の素晴らしさ。毎回この充実感に満たされるのが山の醍醐味です。

別山山頂からの眺め剣岳

3-3 転地効果

転地効果とは元々が医療などの転地療養から来たものです。日常生活とは異なる場所に行き、別の環境に身を置く治療法の一種でした。自然や観光にも同様な効果があることが科学的に解明されたので転地効果として扱われています。山間部では標高が高くなるために、気圧が低下をするので副交感神経が働き易くなります。山登りなどは日常の『空間』とは明らかに一線を画しています。新しい場所で未知なる出来事に遭遇をして、色々な判断をして順応して行く行為は転地効果そのものです。非日常的の解放感のある世界へと出向くと心身共にリフレッシュします。

裏磐梯のニッコウキスゲ
裏磐梯のニッコウキスゲの群生~非日常の自然と触れ合う世界では心身共にリフレッシュをします♪

3-4 自然には治癒力がある

私たちハイカーは週末にて自然と戯れると心が落ち着きます。日々仕事などで生じる頑張るモードの交感神経は抑制され、癒しなどのリラックスモードが活発化する副交感神経へと自ずと変換されます。

フィトンチッド

登山やハイキングでは解放感のみならず防衛本能も備わります。フィトンチッドとはロシアのレーニングラード大学の ボリス・トーキン氏により発見された化学物質です。植物は傷つけられると外敵から自らを守る為に発するこの殺菌性のある揮発性成分を発します。本来、植物とっては自己防衛としての役割が、人にとって細菌やカビやウイルスや微生物などに対しても殺菌性や免疫作用も効果を発揮します。つまり森が自らを守るために発するこの成分は、ハイカーに防衛本能を備えてくれるのです。

1/fゆらぎ

自然の中で人が心地よいと感じる不規則さを『1/fゆらぎ』と言います。自然界は独自のサイクルを持っています。自然のあらゆるものは時の経過と共に必ず変化します。不規則な自然界の音色、例えば森の中で鳥が鳴き、滝の水が岩を打つ衝撃音、小川のせせらぎ音、風により木々がカサカサという音。この常に同時進行をしている自然の音は、アルファ波(癒しの効果が得られている時に出る脳波)が出やすくなりリラックスをさせてくれます。

滝と沢が生み出す天然クーラの世界~クールインプレ

4.登山は脳の活性化をしてくれる

登山は脳の活性化がされます。登山時は全身への血流が上がることで脳への血流も同時に増します。実際に山を歩くことにより以下のような脳内効果があります。

登山中に出る脳内ホルモン:ドーパミン、アドレナリン、βエンドルフィン、セロトニン登山中における脳内ホルモン

4-1.ドーパミンとアドレナリン:やる気のホルモン

脳が活性化されると、作業効率を高めるために『ドーパミン』と『アドレナリン』という脳内物質が生まれます。特にアルプス登山などの難易度のある山に行くと出やすいです。登山中の脳感度は高く俊敏性や迅速性や計画性などが向上します。身体的なパフォーマンスやハッピー指数も上がり、老化を防ぐのはもちろんのこと、冷えやむくみ、記憶力や集中力などが向上します。ハイカーがこれから頑張るぞと思う時に生まれる『やる気のホルモン』です。

4-2.エンドルフィン:幸せのホルモン

エンドルフィンとは、痛みやストレスに対処するために神経系(脳内ホルモン)によって作られる化学物質のことです。巷でよく言われているランナーズハイのことです。(登山的に言うと『ハイカーズハイ』とでも呼びますか。)朝から夕方まで歩き続ける登山にも同じような作用が起きます。山をずっと歩いているときに感じる『爽快感』こそがエンドルフィンの正体です。この『幸せのホルモン』の特徴とは、モルヒネを摂取した時と同じような多幸感を得られます。別名『体内性モルヒネ』、『脳内麻薬』とも呼ばれモルヒネの約6.5倍に及ぶ鎮痛作用があるとも言われています。

4-3.セロトニン:安心のホルモン

セロトニンとは、心の安定性を整える脳内ホルモンです。別名『安心のホルモン』と呼ばれています。セロトニンがきちんと分泌されると、ほかの神経伝達物質が突発的な行動を抑制して、平常心を持ち続けることができます。緊張感や不安などを和らげてリラックスをさせてくれる効果があります。セロトニンは太陽の光を浴びたり、登山やハイキングなど一定のリズムで運動することで増加します。特に登山は運動時間が長いのでセロトニンの排出量が多くなるのが特徴です。

4-4.登山中の脳内ホルモンの移り変わり

これらの脳内ホルモンは歩行時間により移り変わります。最初の20分間を歩くとドーパミンやアドレナリンが出ます。登山経験者であれば感じた方も多いかと思われますが、歩き始めは身体が順応をしていないのでダルク感じることがあります。次第にやる気がみなぎって来て、これはやる気のホルモンのドーパミンやアドレナリンが歩行により脳内で排出されたことを意味します。その後40分歩き続けると今度はやる気から、爽快感へと脳内ホルモン(セロトニン)へと移り変わります。(勿論、ルートの難易度や自然環境などにもよります。)セロトニンは幸福感やリラックス効果をもたらすホルモンなので、綺麗な景色や癒しのある光景や無事に下山をした時などの満足指数が高い時に生まれます。

登山の歩行時間と共に出る脳内ホルモン|20分:βエンドルフィン・ドーパミン・アドレナリン|40分:セロトニン歩行時間に比例をして排出される脳内ホルモンの種類が異なります。

インプレ式:健康登山へのまとめ~自然界がもたらすハイカーへの恩恵
人類の誕生して以来、人は自然の中で長年生活をして来ました。日々、人工物の多い環境下で暮らす私たちは気づかぬうちにストレスを生み、溜め込んでいる方も多いのではないでしょうか。元来、自然の中で生きてきた私たちにとっては、自然と触れ合うということは、単に山に行くということではなく、『私たちが元々いた場所に戻るという行為』なのです。そして束の間とはいえ、そこに身を置くということは、私たちハイカーにとっては『古来から伝わる優しい環境で過すこと』と言えるのではないでしょうか。だからこそ登山による健康効果が科学的かつ医学的な根拠に基づいているのは、特別なことではなくごく自然なことだと言えるのです。

今回はこれまでで(令和2年5月1日時点で)最もボリュームのあるコンテンツとなりました。これからもサークル活動を通して健康で安全な登山を広げて行きたいですね。全てのハイカーさんにとって少しでもお役に立てれば幸いです。今回はかなりボリュームがありましたが、最後までお読み頂き有り難うございました。また山でお会いしましょう。大島

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